2010年7月19日月曜日

3D放送・3D配信は2011年後半~2012年には新方式で実現か

 スウェーデンのEricsson社は,これまで各種無線技術,特に携帯電話機や携帯電話サービスの基地局で世に知られてきたメーカーである。ただし,最近の数年間で映像の伝送技術やその伝送機器のメーカーを買収するなどして,映像データの圧縮技術を扱う機器やインターネット技術を用いた映像配信「IPTV」に向けた事業展開も始めている。2010年4月,Ericsson社は米ESPNの3D専門チャンネルの実現に,同社の映像エンコーダ,レシーバなど動画処理システム一式を提供すると発表。今後,IPTVを中心とした3D放送や3D配信事業にも携わっていくことを明らかにした。Ericsson社の日本法人である日本エリクソン エリクソン北東アジア マルチメディア&CSI事業本部 ビジネス推進部 ビジネスディベロップメントマネージャーの公文象二郎氏に,今後の3D放送・3D配信技術の標準化について聞いた。

――現在,3D放送や3D配信では,「サイド・バイ・サイド」と呼ばれる,左目用映像と右目用映像の解像度をそれぞれ水平方向に1/2に圧縮し,1枚のフレームにして伝送する方式が主流になっている。欧米ではこの方式に対する次世代技術についての議論が盛んだと聞くが,理由はなにか。

公文氏 サイド・バイ・サイドは大きく見れば,「Frame Compatible 3D」あるいは「3D-in-2D」という技術に分類できる。これには,フレームを上下に区切って左右の映像を入れる「オーバー/アンダー」といった方式も含まれる。いずれも,放送局にとって特別な中継機器がいらず,3Dコンテンツと(それをサイド・バイ・サイド方式に変換する)装置さえ用意できれば,比較的容易にサービスを開始できるのがメリットだ。

 しかし一方で,課題がいくつもある。一つは,視聴者にとって映像の解像度は,2Dの映像の実質1/2に低下してしまうことだ。また,3Dに非対応のテレビでは,放送を受けても正しく表示できないという課題もある。放送局にとっては,2Dと3Dの放送を別のチャンネルに分けて映像データを送出する必要もある。

――それらの課題を解決する技術にはどんなものがあるか

公文氏  候補となるのは「2D Compatible 3D」と総称される技術だ。これには「2D+Delta」,「3D-in-2D Enhancement」といった技術が含まれる。ただし,それぞれ一長一短がある。

 2D+Deltaは,3Dの映像データを,2Dの映像データと,それと3D映像との差分情報に分けて伝送する方法。チャンネルを2Dと3Dで分けずに済む,サイド・バイ・サイドなどより伝送データの量が抑えられる,などのメリットがある。一方で,2Dと3Dとでは効果的なカメラ・ワークや映像表現に違いがあり,両者を同じチャンネルで放送することへの異論がある。

 一方,3D-in-2D+Enhancementは,3D-in-2Dの技術を発展させてフルHDの解像度を実現しようという技術。現在,規格化団体の議論を見ると,次世代技術として最も有力で,2011年後半~2012年ごろには標準化され,実際の3D放送・3D配信に用いられる可能性も出ている。



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