2010年12月8日水曜日

テッド・シロビッツ氏と、ジョン・セグード氏に訊くEPICの秘密




今回発表されたエピックの最新スペックは次の通り。

5Kモードでの120fps撮影
2Kモードでの240fps撮影
RED FLUTカラーサイエンス
本体ボディ重量:2.3kg
シャッターシンク/リバーシブルセンサースキャン機能搭載(3D対応機能)
3D撮影用メタデータ&メニュー搭載
HD-SDI出力/720、1080p、2K、4:2:2/4:4:4対応
高ダイナミックレンジ/13.5ストップ(HDR機能にて18ストップ)
ホットスワップ・バッテリーシステムによる連続的な撮影が可能(1個で30分稼働)
24bit/48Khzサンプリングの2ch、4chオーディオ入出力対応
ISO 200〜12800対応
RED CODE 30〜250までの圧縮レベルの可変撮影
HDMI出力搭載
16GB CFメモリーカードによるRED CODE RAW記録
効率的なクーリングシステム(湿気、粉塵を排除)
さらに正式発表された新しいモジュール群が登場してきた。

256/512GB SSDモジュール(REDCODE RAW/ロスレス2.5:1記録)
PRO I/Oモジュール:XLR/AES Digital Input
タッチスクリーンLCD:メニューコントロール機能付き液晶カラーモニター
BOMB EVF:5インチ/9インチ 24bit電子ビューファー
H.264モジュール:HQ1080pストリームCFカード出力対応
REDMOTE/REDMOTE PRO:ワイヤレスリモートコントロール(100mの遠距離からのワイヤレスリモートコントロール)

今回のEPIC in Japan開催にあたり、来日した、お馴染みのTED SCHILOWITZ(テッド・シロビッツ)氏と、スチルカメラ設計部分を担当する初来日のJON SAGUD(ジョン・セグード)氏に、EPICの最新仕様とRED社の構想についてインタビューした。

- 今回EPICに搭載された、3Dカメラ用に開発された新たな技術について教えて下さい。

TED氏(以下T):RED ONEではゲンロック機能により、2台同期での3D撮影が可能でした。しかし2台の完全同期というのはなかなか難しかったので、EPICでは新たに開発したセンサーロックによる同期機能を搭載したことにより、2台のEPICの完璧な同期による3D撮影が可能になります。センサー自体を動かすことも出来ますし、2台のセンサーとセンサーの読み出しもハーフミラーリグ使用の場合でも、反転時にCMOS内のデータ読み出しも反転させることが出来るので、完全な同期が可能です。この点でも現行の他のカメラよりも優れた機能と言えます。

JON氏(以下J):我々は"Power 3 Access Control"と呼んでいますが、メカニカルデザイン的に解説すると、画像をセンサーの中心部分からだけではなく、センサーのエリア内で選びたい地番を指定して、X軸/Y軸/Z軸で自由に選択/制御できるという優れた設計になっています。3D撮影における2つのセンサーの理想値が75mmとされており、2台のEPICを並べると約80mmなので、他社のカメラを2台並べるよりは、その理想に遥かに近づいていると言えます。このEPICの機能は、EPIC複数台のセンサーを同期させることも可能なので、3D以外にも使用用途はもっと広がるかもしれません。制限として何台まで可能か?というのはまだテストしていないのでわかりませんが、物理的には何台でも可能です。
-今回はHDR機能やスチルカメラとしての機能アップが目立ちますが...。

T:今回スチル機能に関しては、2つの新しい技術を発表しました。その一つが"メタデータタグ"です。24/25pもしくはHS撮影でのムービー撮影時に、シャッターを切ったその瞬間をスチル画像として切り取れるという機能です。それも動画も静止画も同じ港解像度の画像切り出しが可能です。

J:今回のEPICやSCARETは、スチルとムービーの機能を上手くブレンドするということが、ようやくカタチなった製品です。ダイナミックレンジも優れていて、尚かつフォーカス機能も優れているという部分ですね。EPICでは、例えば風船が割れるようなシーンを、14メガピクセルのカメラで2秒間に240コマの撮影ができ、その中でスチル画像が必要なら240コマの中のどれか一つを選べ、ムービーならばスローモーション画像が同時に得られるわけで、それがこれまでのRED ONEとは一番の違いです。

T:RED ONEでは、このところムービーとスチルを同時に撮影するという需要も増えています。すでに多くのメジャー雑誌の表紙がRED ONEで撮影されました。そういう需要にも応えるため、今回はニコンとキヤノンのスチル用レンズの電子制御マウントを開発しました。特徴的なのは電子制御の方法が、フォーカスとアイリスはLCDのタッチスクリーンで、ズームはハンドル部分でコントロールできるという点です。

J:ニコンとキヤノンとは、両社と技術提携をして各レンズ開発メンバーとディスカッションを積み重ね、プロトコルの確認など電気的制御ができるようになりました。今後はREDからも電子制御レンズを発表する予定ですが、高解像度な高性能レンズで、シネマ用途にももちろん使用出来ます。自社開発のレンズなのでさらにEPICやSCARETとの相性も良くなるはずです。もともとRED ONEというカメラは(プロ向けとして)安い価格帯のカメラなので、レンズもキヤノンやニコンのレンズを使っていたという需要は多かったと思います。今後EPIC/SCARETになると、さらにスチル撮影での需要が増えると予想されることから、この技術が必要だと思いました。
-低価格帯機種のSCARETについて何か進展はありますか?

T:近々発売を予定していますが、まだ正式な時期は言えません。完成したときが出荷できる時です(笑)が、それはもう間近ですでに製品化への最終のテストに入っています。センサーサイズが違うという部分以外には、SCARETもこのEPICとほぼ同じ機能/仕様になります。SCARETのラインナップには、8倍のズームレンズ一体型のモデルがあり、こちらが先に市場に登場する予定で価格は$5〜6,000相当を考えています。その後に出てくるレンズ交換式モデルには、もちろんこのキヤノン/ニコンマウントも使用出来ますし、EPICの他のほとんど全てのパーツに互換性があります。
- 今回のEPICの改善点はどのように決定されたのでしょうか?また今後の開発の方向性はどのように考えていますか?

T:我々は事前に市場マーケティングに力を入れたり、宣伝に力を入れてお客様が喜ぶであろうという商品を作るというメーカーではありません。最初から目的を持った技術開発先行で、その後ユーザーからのフィードバックを次の開発に反映させるという手法で製品開発を進めています。ですので、RED ONEもすでに初期の約60%を改造しているわけです。最新のEPICには"マジックコンポーネント"と呼んでいる動画撮影時のHDR機能が追加され、ダイナミックレンジ13+〜18+のストップが得られるなど多くの画期的な機能が盛り込まれました。これも我々の試行錯誤の中で発見された技術です。

J:RED様々な開発におけるカギとなる哲学は"シンプルで、ロジカルで、エレガントである"ということですが、創業者のジム・ジャナードは40年間の写真撮影歴をバックグラウンドに持っている情熱的な写真家でもあります。レッドの製品には、彼が考えていたデザインや様々なアイディアがインプットされています。それをバックグラウンドに『夢のカメラ』を作ろうという理念に基づいて、REDのカメラは基本設計がなされているのです。そうしたユーザー視点は、もちろん彼だけでなく開発エンジニアたちも、元々がカメラユーザーとして何年もカメラを扱ってきた人たちが開発して来ているので、常にユーザー視点で開発を進め、ユーザーに第一に考えているということです。

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